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マヨネーズ命!軸がぶれる中小企業が学ぶべきキューピーの事業戦略と社員教育

公開日: : ビジネスモデル, 教育論

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マヨネーズや3分クッキングでおなじみのキューピーマヨネーズ。会社が大きくなると経営の多角化が進み、最終的には金融ビジネスが一番儲かるともいわれていますが、キューピーは違うようです。

photo credit: ❁Mochi-Chan❁ (。◕‿‿◕。) via photopin cc

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マヨネーズをバックアップする周辺事業と地道な企業努力 

結局マヨネーズなんです。キューピーの売上高の内訳は、調味料事業が27%、たまご事業が17%、サラダ事業が19%、加工食品事業が11%、物流システム事業が23%です。数字だけみると、マヨネーズやドレッシングが主力の調味料事業だけじゃなく、他の事業もがんばっているから多角化なんじゃないの?と勘違いしてしまいそうですが、そうではないです。 

たまご事業は、マヨネーズの原料となるたまごの研究開発を進めるうちにスタートしました。今では吉野家に半熟たまご、ロッテリアに目玉焼きを提供するなど、外食産業にも貢献しています。またマヨネーズの原料にならなかった部分(卵白の薄皮はストッキング、殻はチョークの原料)もすべて無駄なく活用しています。さらにマヨネーズやその他の食品を扱う温度や湿度、その他の管理ノウハウが物流システム事業となり、売上高の85%が他の食品会社からといいます。 

調味料のポリボトルもマヨネーズが先駆けでした。3~5層の構造にすることで、賞味期限が7ケ月から10ケ月になり、この開発がキューピーのターニングポイントになったともいいます。食品メーカーが容器の開発をしていたのには驚きました。他のメーカーとの共同開発ですが、特許もとっています。食品を売る会社にとって容器の良し悪しは死活問題ということが伺えます。 

こうした活動が知れ渡っているのもマーケティングをちゃんと行っているからでしょう。そんなマーケティング戦略で興味深いのが、新聞広告です。というのも、定期的に一面でドカーンと広告を打つのではなく、毎日小さいスペースにキューピー人形とマヨネーズのイラストの広告をちょこんと打ち続けていました。これも地味ながら効果があるといいます。常にお客様に忘れられないようにする企業努力がキューピーの土台となっていました。 

いい社員が育つからいい会社になる 

外向きの活動だけが注目されがちですが、キューピーでは社内の教育システムも優れています。っていうか、社員が自主的かつ意欲的に仕事に取り組める環境にしているからこそ、自然と社員が育っているという表現の方が正しいかもしれません。つまり究極の教育システムを社員自ら作り上げたといったほうがよさそうです。 

特に生産現場で働く社員のチーム構成の工夫には感動しました。たとえばチーム名「たまらないチーム」は、残業もなく仕事が“たまらない”ようにする、ストレスが“たまらない”ようにする、といったメンバー同士の目標をチーム名に表現したことで、仕事に前向きに取り組めラインにいたくて“たまらない”ようにする、という狙いがあります。 

このような生産現場の社員が主体的に動くことで、かつて年間400回あったトラブルがどんどんカイゼンされ、今で生産量1.5倍(1330万円の経済効果)をもたらしました。給料よりもやりがいを重視している社員がたくさんいるようです。カイゼンによる稼働率の向上は、会社だけじゃなく、チームメンバーや自分のためにもなるという思考です。 

そういう社員に育つのも、「親を大切にしなさい」という社訓が効いているのかもしれません。社内や社外に対してやさしい気持ちで接することが、周囲にいい影響を与え、その結果が自分への成長ややりがいにつながっているわけです。ちなみに社内では、お中元とお歳暮を親御さんに贈る習慣もあるそうです。 

≪まとめ≫

「得意を掘り下げ、周辺から事業が広がる」と三宅社長がいっていました。ニッチ戦略は小さな会社だから使える経営方針だと思っていましたが、大きな会社も同じでした。軸をぶらさず主力商品の売上をあげシェアを確保するために、周辺事業にも力を入れ日々研究に励んでいるわけです。また社員を“育てる”のではなく“育つ”環境や仕組みをつくることが究極の社員教育といえそうです。キューピーの事業戦略や社員教育の思考は大いに参考にすべきでしょう。 

<参考>カンブリア宮殿バックナンバー かぜ薬から牛丼のタマゴまで…技術で挑む異色食品メーカー キユーピーの秘密

2014年3月20日

著者 ゆうすけ

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