「有田焼」取り返した!中国で商標がパクリ登録されるパターンとその対処法
「有田焼」というネーミングが中国で先に商標登録されていたため、佐賀県は本家本元にも関わらず「有田焼」と表示できないトラブルが2010年に発生しました。そのとき佐賀県は、イベント会場で「日本有田産」「ARITA JAPAN」という表記で有田焼を展示したそうです。
しかしその後、佐賀県有田町と県陶磁器工業協同組合は、先に登録された「有田焼」が実際には使われていないことを指摘して、商標登録の取り消しを中国の特許庁に請求しました。そしてようやく請求が認められ、無事に「有田焼」を取り返すことができました。
でもそもそもなぜ先に登録されてしまったのか?そしてなぜ取り返すことができたのか?ということを整理しました。
日本の価値ある情報はウォッチされている
日本国内のネット環境はすごく発達しました。だから海外からも日本の情報をばっちり収集されてるでしょう。売れている商品はどれか?そのうち売れそうな商品はどれか?など簡単にわかってしまいます。
またリアルな活動も活発です。中国国内での展示会イベントのみならず、ビックサイトや幕張メッセのイベントにも多くの中国人がきています。イベント会場はプロモーションのチャンスですが、一方でタイムリーな情報を垂れ流していることも認識すべきでしょう。
だからウェブサイトでもリアルなイベントでも、オープンにする前にパクられてもいい情報かどうかを検討すべきです。
中国で登録していなければパクリ登録される
商標は国別で取らなければなりません。だから日本で商標登録していても、中国では無意味です。その商標が中国で登録されていない限り、パクって登録されるリスクがあります。
しかも外来語は母国語より商標登録されやすいです。なぜなら外来語は“記号”のような扱いを受けやすいからです。
中国の場合、漢字が母国語です。そのためカタカナやひらがなの商標だと、中国では外来語のためあっさり登録されてしまうリスクが高いです。
実際に使ってなければ取り消し可能
商標法の趣旨は事業に対する信用の獲得です。つまりその商標(ネーミング)があるから商品を安心して購入できるわけです。だから使っていない商標の登録をそのままにしておくことは、他の事業にとって目の上のタンコブになりかねません。
そのような趣旨を考慮して、登録後3年間放置されていた商標なら、登録の取り消しを請求できる制度が中国にもあります。もし下記の3つの条件を満たしたら、登録の取り消し請求を認めてもらえます。
1.登録した商標を使っていた証拠が、商標権者にない場合
2.使っていた商標が、登録した商標ではない場合
3.登録した商標を実際には使っていない場合
≪まとめ≫
パクリ登録されていてもすぐにあきらめないでください。登録を抹消できるのは、使用していない商標だけでなく、訳あり商標(登録できない理由があるのに登録されてしまった商標)も抹消できます。安全を優先するなら、ビジネスする国で商標登録するのをおすすめします。
<参考>
・中国で「有田焼」表記可能に 阻止の中国人商標登録者、使わず3年、抹消
・中国における商標不使用取消審判の新しい規定
2014年1月9日
著者 ゆうすけ
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