言葉は生きている。流行するのも商標登録するのもタイミング。
先日、2013年の流行語大賞が決定しました。今年の大賞は4つもあったし、決定するまでにいろいろと話題になりました。
流行したのは偶然じゃない
流行語ってそもそも狙っているのか、仕組まれたものなのか、実際のところよくわかりません。でも今年大賞をとった流行語「倍返し」、「今でしょ!」、「おもてなし」、「じぇじぇじぇ」には、生まれる前にそれぞれエピソードがありました。
--ここまで「倍返しだ!」がはやると思いましたか? 流行語大賞を狙えると思いますか?
もちろん、流行語と言ってもらえるのは、ドラマが評価されているということで、うれしいと思いますが、そのために作っているのではないので(笑い)。まずは見てもらう方に、ドラマの時間をどれだけ楽しくスカッとして見てもらうかに尽きるので、僕らはそれを真面目にやっていきます。(2013年9月14日 毎日新聞デジタル 半沢直樹 : プロデューサーに聞く「倍返し」秘話、タイトルへ込めた思い)
予備校の授業時間よりも長い受験生の日常時間に、彼らが「勉強しよう!」という思いをかき立てることこそが、予備校講師の本来の役目ではないかと考えるようになったのです。林先生は、これまで以上に授業の準備と工夫を重ねました。それと同時に、生徒が日常に飛び出したくなるような言葉を発信し続けたのです。
ポジティブな言葉を大切にするようになった林先生にとっては、あの流行の言葉は、特に狙ったものではありません。毎日生徒に向かって発信し続けていた言葉の一つに過ぎず、偶然あの一言だけがブームとなったのです。ですから、いつ、どこで発したかは覚えていないようです。(2013年3月23日 WEB本の雑誌 「いつやるか? 今でしょう!」の誕生秘話)
さらに滝川は「どうすればおもてなしという言葉がみなさんの心に残るかを考えまして、あえて2回繰り返しまして、ジェスチャーを入れて、強調して、優しく伝えられるようにした形だったんです」と、秘話も語っていた。(2013年12月2日 芸能ニュースラウンジ 滝川クリステル 流行語年間大賞受賞に「お・も・て・な・し」再現!秘話も明かす)
そんな宮藤官九郎が、脚本の下調べで初めて岩手県久慈市を訪れた時のことだ。「おばさんたちの会話を聞いて、僕も東北出身なのに半分くらいしか分からなかった」というのである。そんな時に“じぇ”という言葉が耳に残った。聞いてみると『びっくりした時に“じぇ”って言う。もっとびっくりしたら“じぇじぇ”って増えていく』らしい。「これは、面白いと使わせてもらいました」といったいきさつで、あの「じぇじぇじぇ」の台詞が誕生したのである。(2013年5月25日 TechinsightJapan 「“じぇじぇじぇ”の意味知らなかった」。宮藤官九郎が明かす『あまちゃん』秘話。)
その言葉が流行するかどうかはプロモーションの影響も大きいはずです。しかしはじめから聞き手の心に響く言葉かどうかをちゃんと考えていることに間違いないでしょう。
歴代の流行語を見ても、真新しい言葉って意外に少なくて、今まで何気なく使っていた言葉のほうが多いです。2004年の「チョー気持ちいい」は違うにしても、それ以外で流行語になった言葉には、話題になりそうな由来や時代背景がちゃんとありそうです。
商標登録できないときもある
そんな流行語をビジネスに活かすなら、商標登録しておくべきです。なぜなら流行語そのものは誰のものでもなく、独占できないからです。そして商標登録は流行語を使う商品を指定して申請し、その商品に対してのみ独占することができます。
しかし今年の5月に岩手県のお菓子屋さんが「じぇじぇじぇ」を商標登録しようと先に申請していたため、基本的に「あまちゃん」本家のNHKはお菓子について商標登録できない状況になってしまいました。
一方、先に申請した岩手のお菓子屋さんは、「あまちゃん」に便乗したとネットでかなり叩かれたものの、ひょっとしたら商標登録できないかもしれません。
「先願の菓子店に拒絶理由通知書を送ったのは、<じぇじぇじぇ>がNHKのドラマで広く浸透したため、菓子店が<あまちゃん>人気にあやかってビジネスをしていると消費者が誤解する恐れがあると判断したからです」(特許庁担当者)(2013年12月5日 日刊ゲンダイ 地元菓子店もNHKもNG…「じぇじぇじぇ」の商標登録が宙ぶらりん)
基本的に商標登録は早い者勝ちですが、「じぇじぇじぇ」が流行したことで認知度が上がってしまったため、商標登録を認めないと判断されてしまったようです。
確かに、有名になった言葉を他の誰かが商標登録すると、その商標がついている商品の出所がわからなくなってしまいます。つまり「じぇじぇじぇ」がお菓子のパッケージについていたら、あまちゃん関連の商品だから買っちゃおう!とユーザーが誤解してしまうことを特許庁は気にしているわけです。
言葉は生きものだ
「死語」という言葉があるように、言葉には命があります。そのことを象徴するのが、1985年の流行語です。なんだかお分かりですか。これが流行った時代背景を思い出せば納得できるのではないしょうか。
1985年の流行語は、飲み会のコールで定番の「イッキ!イッキ!」でした。今どき飲み会で一気飲みするのは、この当時学生だった人たちくらいかもしれません。今の「絶食系男子」にはひょっとしたら無縁でしょうか。
それに商標登録したとしても、一生安心というわけではありません。かつて味の素社は「味の素」というネーミングを商標登録しました。ところが一般の人たちが、グルタミン酸を原料とした調味料のことを「味の素」と代名詞のように使ってしまったのです。そのおかげで、危うく「味の素」は一般名称になりかけました。
荷物を送ることを、俗に「宅急便(たっきゅうびん)」といいます。しかしこれはクロネコヤマトが商標登録しています。そのため佐川急便は「宅急便」とは言えず、「宅配便(たくはいびん)」と言わなければなりません。
≪まとめ≫
流行するタイミングも商標登録するタイミングも、ある程度コントロールできそうです。そのためタイミングを見定めることをオススメします。
2013年12月5日
著者 ゆうすけ
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