スターバックスvsスターバン 容赦なし!仁義なき商標の戦いinバンコク
スターバックスのロゴがパクられる事件について扱うのは今回で2回目です。前回はスターバーというガールズバーの事件です。結局、千葉県のガールズバー経営者は商標法違反で略式起訴されました。
今回はタイで事件が起こりました。「スターバンコーヒー」と名付け、スターバックスのロゴをパクッたコーヒー屋台を経営するおじさんに対して、スターバックスが怒って裁判を起こしたのです。
知的財産権の効力は国毎。つまりスターバックスがタイに店名の文字商標やロゴ商標を登録しておかなければ、商標権にもとづいて文句を言えません。弁護士を雇って止めさせるくらいだから、タイにも当然商標登録しているんでしょう。
本当に商標権を侵害しているのか?
ユーザー目線ではどう考えても似ているし、パクったと思っちゃうけど、屋台のおじさんはパクッてないと言っています(笑)。ではどこがポイントとなるか考えてみましょう。
まず全体的に見ると、円形、緑と白と黒の配色、文字の配置、中央の円の中に描かれたキャラクターのポーズは同じといえそうです。
キャラクターを細かく見ると、スターバックスは、王冠をかぶった人魚が尾っぽを左右に持ち上げているポーズ。一方、スターバンは、ターバンでひげづらのおじいちゃんが、ひしゃく(?)を持った右手とピースした左手を上げているポーズです。
キャラクター自体は異なるため、この部分だけ見たら似てないと言えるかもしれません。しかし総合的に判断すると、同じ部分が多く、キャラクターの違いは影響が小さいはずです。
したがってスターバンのロゴはスターバックスのロゴに似ているといってよさそうです。このためおじさんがスターバンのロゴを使うのは、スターバックスの商標権を侵害することになります。
強きだったスターバンのおじさんに鉄槌!
そんなわけでスターバックスは、2012年10月17日にスターバンのおじさんにロゴを使うのをやめるよう警告状を送りました。通常、パクリ品を見つけてもいきなり訴えるわけではありません。ケンカを売る方も慎重です。大企業だとしても基本的には穏便に済ませたいわけです。
しかしおじさんは無視してTシャツやステッカーやワッペンにこのロゴを使い続けたのです。なぜならこのロゴはデザイナーの友人に作られたものだし、スターバックスからではなくイスラム教から想いついたからとおじさんは言っています。
商標が似ている似ていないを判断するとき、何をモチーフにしたかではなく、ユーザーが商標をみたときにどう思うかが重要です。おそらく多くのユーザーが、スターバンのロゴを見たら、イスラム教よりスターバックスを想い出すでしょう。
そのためスターバックスは、賠償金30万バーツ(95万円)に加え、金利7.5%とロゴの使用をやめるまで月々3万バーツ(約9万5000円)の支払いを求める訴えを起こしました。
たかが屋台、されど屋台
この対応には賛否両論があるようで、屋台なんだからそんなに目くじら立てるなよっていう意見もあります。しかしぼくはこの対応こそスターバックスが持つブランドへの執着だと感じました。
アジア諸国ではパクリ品の被害が増加しています。企業はそのために莫大なお金を投資しています。これはなぜかというと、一つでも許してしまうと、第二第三のパクリ品が出てくるからです。商標侵害、みんなでやれば、怖くない、ってやつです。
ディズニーランドがロゴやキャラクターの使用を徹底的に取り締まっているのもこのためです。ブランドを作り上げるには、自分たちのコーポレートアイデンティティーを長年使い続けるだけではなく、勝手に使わせない努力が必要です。勝手にロゴやキャラを使わせることで、バッタもんの商品が流通してしまうリスクがあります。
≪ピッタリナまとめ≫
警告状が来たということは、送り主も相当の覚悟をしているはずです。もしパクリ品じゃないにもかかわらずビジネスを止めさせてしまったら、その分の賠償金を逆に請求されてしまうからです。また企業にとってケンカを仕掛けることは、会社イメージにも影響します。今回のように、たかだか小さい屋台に訴えたことを批判する意見もあるわけです。
<参考>
・businessinsider – Starbucks Sues Bangkok’s ‘Starbung’ Over Its Logo businessinsider
・South China Morning Post – Starbucks sues Bangkok’s ‘Starbung’ coffee stall over use of logo
2013年11月3日
著者 ゆうすけ
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