北朝鮮に商標登録する目的は守りだけ!?気になるインテルの狙い
米国の半導体メーカー・インテルは、北朝鮮で商標登録する申請を例外措置として認めるよう米国政府に要請しているニュースが報じられました。
米国では、北朝鮮との経済取引が禁止されています。そのため許可なく北朝鮮製のモノなど輸入することはできません。同じく、北朝鮮への商標登録ほか知的財産の活動は、基本的に認められていません。
なぜそこまでしてインテルは北朝鮮に商標登録したいのか、背景と共に考えました。
・意外にも諸外国から北朝鮮に商標登録されている
北朝鮮に商標登録する会社なんてあるの!?と思っていたところ、どうやら年に1000~2000件くらいあるようです。北朝鮮で商標登録を行う場合、朝鮮商標局というところに申請書類を提出しなければなりません。
・・・WIPO(世界知的所有権機関)の統計によれば、2010年には海外から1231件の商標出願がなされている(2008年には2007件出願された)。 「協和特許法律事務所 2012/08/28 コラム 「中国の知的財産制度8『北朝鮮への商標登録』 より」
具体的な社名はわかりませんが、これら企業は北朝鮮の国内で模倣品がつくられることを防ぎたいというのが狙いだと思います。
・インテルの狙いも守りだけ?
特例措置の申請をしてまで北朝鮮に商標登録するのは、何かしらの理由があるはずです。韓国メディアの中央日報新聞日本語版には以下のように書いています。
またインテルは北朝鮮への進出に備え、すでに北朝鮮側の代理人として平壌(ピョンヤン)の牡丹峰(モランボン)特許・商標会社を選定したことが把握された。
北朝鮮に商標登録するには、北朝鮮国内で代理人をつけないといけないので、これだけでインテルが北朝鮮国内にビジネス進出するとは考えにくいと思います。
また北朝鮮の経済情報サイトでは、インテルのスポークスマン・Chuck Mulloy氏の電話インタビューで以下のコメントを得たようです。
“Intel has no intent of doing business in North Korea,” Chuck Mulloy, a corporate spokesman, told Yonhap News Agency by phone. “It is (just) about IT protection.” 「North Korean Economy Watch – Intel seeks trademark protection in DPRKより」
つまりインテルは北朝鮮でビジネスするつもりはなく、北朝鮮国内でインテルマーク付きの模倣品が出回るのを防ぐことが狙いのようです。
・世界中に出回る模倣品被害の現状
先日、弁理士会が主催する「グローバル模倣品対策研修」なるものに出席しました。そのとき、現在どのようにして模倣品を売買しているかという話がありました。最近では模倣品企業が悪知恵をつかって、他社の権利にひっかからないようにしているそうです。
具体的にいうと、たとえば中国国内にパソコン用メモリーをつくる模倣品業者がいるとします。この模倣品業者のメモリーの品質は悪いものの、インテルマークをつけるとインテル製とそっくりです。だから買う人はまったくわかりません。
しかしインテルマークは中国国内で商標登録されているため、この模倣品業者はこのマークをつけてメモリーを販売することができません。販売したら商標権にひっかかるため、販売停止になるだけだからです。
そこで模倣品業者は、自社のメモリーとインテルマークのラベルとをそれぞれ外国に輸出して、輸出先の国でメモリーにラベルをつけてインテル製に見せかけて売っているのです。当然、輸出先の国でインテルマークが商標登録されていないことは確認済みです。
このような模倣品の現状を考えると、インテルが北朝鮮で商標登録する理由が単なる守りにすぎないとしても納得ができます。なぜなら北朝鮮は軍事投資が盛んなため、インテルマーク付きの模倣品が出回る可能性が十分あるからです。
≪ピッタリナまとめ≫
直接経済取引が許されていない国だとしても、その国に摸倣品が流れ込む可能性は十分あります。そう考えると、例外措置を申請してでも商標登録してプロテクトする価値はあるかもしれません。
2013年8月9日
著書 ゆうすけ
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