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悪意の特許出願?賢い特許戦略?

公開日: : 特許, 特許戦略

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photo credit: Illuminati via photopin (license)

悪意の商標出願」というタイトルで特許庁がセミナーを開催しているということで、これに対抗してみました(笑)。決してつりではありませんのでご了承ください。

ここで、「悪意の商標出願」とは、本家より先に商標を登録してしまい、本家がその商標を無許可で使えなくする(使わせるかわりにお金を要求する)という手口をキャッチ-にした表現だと思います。ドメインの先取り転売に似ていますね。

では、「悪意の特許出願」というはないのか?というと、あることはあります。ただ、商標のように悪質とは言い切れず、むしろ賢い特許戦略なんじゃないか?というくらい高等なテクニックが必要なためか、件数も未知数です(悪質と言えば「冒認出願」でしょうが、ここでは除きます)。

ぼくとしては、もしお客さんが他社に「悪意の特許出願」をされたらイタタた~って感じですが、ライバル会社の弁理士としては、してやったり!(賢い特許戦略)というのが本音かもしれません。

そもそも、特許というのは、一度オープンにした発明(リリース発表後の商品)には目新しさ(新規性)がないため、登録できないルールなんですが、「悪意の特許出願」はその盲点をついた手口といえます。ちなみに、商標というのは、オープンしようがしまいが関係なく登録できるルールなので、本家の不意をついた「悪意の商標出願」が多発するわけです。

では、ぼくが今までに聞いたことのある「悪意の特許出願」の手口とその影響をご紹介します。読む人にとっては、それは賢い特許戦略だろ~と思う人もいるかもしれませんね。

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「悪意の特許出願」の手口とその影響

A社が「悪意の特許出願」をした方、B社はA社のライバル会社という設定です。

1.A社はB社の商品のリリース情報を入手
2.リリース情報以外の特徴を自社で発見してA社が特許出願
3.A社の特許が成立
4.B社はA社の特許により安心して商品販売できない
5.B社はA社の特許を無効にできないか悪戦苦闘

ぞれぞれ解説します。

1.A社はB社のリリース情報を入手

例えば、A社が展示会で新商品をリリースしたとします。すると、情報収集しにきたB社にとって、そのリリース情報(パンフレット等)はいいお土産になります。

そして、持ち帰ったA社の新商品のリリース情報から、B社に役立つ部分がないかを分析しているんだと思います。

2.リリース情報以外の特徴を自社で発見してA社が特許出願

先にも書いたとおり、特許は発明に新規性が無ければ登録できません。つまり、リリース後に特許出願しても、原則認められません。

ところが、リリース情報には含まれてなく、かつそのリリース情報からは簡単に思い付かない特徴(例えば、商品に関するパラメータ)であれば、リリース後に特許出願しても認められる可能性は十分あります。

3.A社の特許が成立

そのため、審査を通過し、あたかもA社が自ら考えた特許として成立します。発端はB社の商品のリリース情報だとしても、そのリリース情報以外の特徴の特許であるため、盗んだアイデア(冒認)での出願にもなりません。

なお、審査にて、その特徴が掲載された先行技術文献が見つかれば、その先行技術文献を引用してもちろん特許不成立になります。

4.B社はA社の特許により安心して商品販売できない

ここで、A社の特許の成立に気づかないままB社が商品を販売したら、A社の特許権を侵害することになるリスクが大いにあるわけです(設計変更などしていれば別ですが)。

一方、A社の特許の成立に気づいたB社にとっては、いきなりA社の特許権侵害の容疑は免れたとしても、肝心な事業(B社の商品販売)の発展を妨げるリスクがつきまといます。

だから、A社としてはなんとかB社の特許の存在を無効にしたいと考えますが。。。

5.B社はA社の特許を無効にできないか悪戦苦闘

先に書いたとおり、審査を通過したということは、そのような先行技術文献が審査官でも見つけられなかったことになるため、その特許に新規性や進歩性がないことを証明する文献を、B社自ら探さなければなりません。

しかし、そのような文献を探すのは一苦労です。なぜなら、A社が特許出願した日より前に公開されていることを客観的に証明できる文献でなければならないからです。

もちろん、文献が公開された日付の信ぴょう性も問われます。公開特許公報なら特許庁が公開したものなのでその公開日の信ぴょう性も十分あります。

ところが、会社のホームページやパンフレットだと、公開日の改ざんもできてしまうため信ぴょう性が低く、証拠としては不十分の場合もあります。

≪まとめ≫

「悪意の特許出願」とは、B社にとっては大したことない商品だったので無防備にリリース情報を開示してしまったため、それをヒントにライバル会社が自社の発明として特許出願してしまうという手口をキャッチ-に表現したものです。

一方、自由競争社会において、合法的にパクる(参考にする)ことは悪いことではなく、そういう意味で考えると、この手口は「賢い特許戦略」ともいえるかもしれません。

2016年3月11日

著者 ゆうすけ 

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