なぜ戦隊シリーズの新名称の商標出願はいつも9月に行われるのか?
毎年この時期になると次の戦隊シリーズの名称ネタについてネット上で盛り上がっています。どうやら次回は『動物戦隊ジュウオウジャー』のようです。
ぼくの場合、戦隊シリーズの新名称そのものより、それを商標出願の情報からゲットしている点にリスペクトです。実はプレスリリースよりも商標出願の情報の方が早いことが多々あります(その逆もあり)。
ところで、過去3年間の統計を見ると、平均して9月に戦隊シリーズの新名称の商標出願がされているようなんです(トッキュウジャー=2013/8/30、ニンニンジャー=2014/9/25、そしてジュウオウジャー=2015/9/7)。
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番組スタート日からの逆算
ではなぜ9月(正確には8~9月)に商標出願が集中しているのでしょうか?これは新番組の放送開始日(毎年2月ごろ)と関係していると考えられます。
現在の特許庁の運用上、商標登録を出願してから登録が認められる(登録査定を受け取る)までの期間は、平均4~6ヶ月と幅があります(特許庁としてはこの期間を4ヶ月まで引き下げる計画です)。
つまり、8~9月に商標出願しておけば、遅くとも新番組の放送開始日には商標登録が完了している(登録査定後、登録料を納付して登録番号が付与されている状態になっている)わけです。
予備日があることでリスク回避
具体的に『ニンニンジャー』の事例(上記時系列)を見てみるとわかりますが、商標出願したのが2014年9月25日で、商標登録が認められたのが2015年1月13日です。新番組がスタートする2月22日より前ですね。
ここで気づいた人もいると思いますが、商標登録が認められた日(審査官がOKを出した日)が番組放送開始日より1ヶ月以上も前です。でもこれは妥当な予備日です。
万が一、番組放送開始日より後に、審査官から、似た商標が先に登録されてるから認められまへん!とダメ出しされたら(拒絶理由通知を受け取ったら)どうでしょうか?もはや名称変更できませんよね。。
つまり審査結果が出そうなタイミングも逆算し、ダメ出しされた場合も見越して商標出願するのがベターです。
商標登録完了後から使うのが案パイ
総じて、絶対に商標登録しないとビジネス上マズい!ダメ出しくらっても名称変更できない!というくらい大事なネーミングなら、商標登録完了後に使い始めたほうが案パイです。
似た商標が先に登録されてるから認められないということは、つまり他人の商標権に引っ掛かっている(侵害している)ということになります。となると、使用料を払わないと使えなくなるパターンです。
戦隊シリーズの新名称は斬新なものが多いので、似たような商標が登録されているリスクは低いと思いますが、タイミングとしては理想系ではないでしょうか。
≪まとめ≫
色や音のみならず、キャッチフレーズの商標登録もハードルが下がり、さらに審査期間の短縮も図っており、ここ最近で実務上影響しえる商標登録の事情が大きく変化してきました。これらの変化を活用し、名称変更や他人の商標権侵害というリスクを回避しつつ、ネーミングを検討するのがいい進め方でしょう。
<参考> 戦隊シリーズ次回は「烈車戦隊トッキュウジャー」!?商標登録から分析
2015年10月1日
著者 ゆうすけ
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