大阪「泉だこ」から学ぶ特産品のブランド化と地域団体商標登録の関係
地方創生の具体策の一つに、特産品の活用があります。その地域にしかないモノで、それをゲットするためならそこへ行く価値を感じさせること、これがブランド化でしょう。
そのブランド化の第一歩として、大阪発祥の「泉だこ」の場合は、地域団体商標登録をとることからはじまりました。しかし、簡単に登録は認められなかったようです。
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周知性の獲得がブランド化の土台
関西圏ばかりか大阪府内ですら残念なほど知られていないタコを携えて、大阪府漁連は兵庫、京都、奈良などを行脚。「販売実績」を作ってなんとか書類を提出。そして平成22年、4年がかりで泉州のタコは、ようやく「泉だこ」として地域商標登録が認定された。定義は「大阪府の泉州沖でとれる、マダコをボイルしたもの」。タコとしては全国で初の認定だった。
<引用:2015/6/8 「明石ダコを超えよ!大阪発「泉だこ」のブランド化作戦」by ダイヤモンドオンライン>
地域団体商標登録制度は、地域ブランドの保護のために平成18年に導入されました。これにより、「地域名+商品の一般名」(関さば、神戸牛など)の登録が可能になりました。
それ以前は、「地域名+商品の一般名」は基本的に商標登録できませんでした。それを認めると、その地域の関係者が、その地域名をつけて商品を販売できなくなるからです。
しかし、その特産品のネームバリューを悪用し、他の地域でニセモノが販売されるトラブルも起こりました。それだと、ホンモノの評判も落ちてしまい、ブランドに傷がつきます。
そこで、ある一定の要件を満たせば、「地域名+商品の一般名」として登録を認めるよ、つまり「地域名+商品の一般名」を独占していいよ、としたのが地域団体商標登録です。
この制度をいち早く利用した大阪府漁業協同組合連合会の目の付けどころがすごい。「明石たこ」を超えるために、まずは「泉だこ」の名称を守ることにしたわけです。
ところが、地域団体商標という強力な武器を簡単に手に入れませんでした。なぜなら、平成18年当時、「泉だこ」には周知性がなかった(あまり知られていなかった)からです。
地域団体商標を登録するには、全国的に有名じゃないとしても、せめて隣の県など(隣接都道府県)に知られている必要があり、そうじゃないと登録が認められません。
でも、たとえ出願したときに周知性がなくても、その後に広告・宣伝活動をして雑誌や新聞に取り上げられたり、隣の県のスーパーに商品をたくさん納品したりして、多くに人に知ってもらった(はず)という実績を出せれば、登録は認められます。
「泉だこ」の場合はまさにそのケース。登録が認められるまで4年かかったものの、そのおかげでブランド化の土台ができたと思えば、価値ある活動だったはずです。
≪まとめ≫
こういう活動秘話は見ると、ブランド化って地道な努力が必要だけど、その分の見返りはきっとあるはずです。「泉だこ」の場合は、地域商標登録をとるまでのプロセスに価値があったのではないでしょうか。
<参考> 今さら聞けない「地域団体商標」とは? 地方創生と地域ブランド化に不可欠な要素
2015年6月10日
著者 ゆうすけ
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