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知的財産融資の支援が解決策?知的財産教育の支援こそ中小企業の突破口

公開日: : 最終更新日:2014/10/08 弁理士, 教育論, 特許

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知的財産を担保に融資を獲得するための支援を特許庁が検討しているそうです。これについて考えをまとめました。

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中小企業の課題は知的財産活動の欠如 

大企業は収益につながるか不透明な特許も取得しておき、ノウハウを囲い込む戦略がとれる。中小企業は大企業のような知財担当者の配置が容易ではなく、「独自技術があっても知財取得に尻込みする企業もある」(特許庁)という。

「知財立国」を目指す政府は、中小企業による特許料の軽減や国際出願料の補助などの支援策を打ち出している。一方、知財をめぐる経営戦略では、他社に知財を開放して技術発展につなげる「オープン化」の潮流もあり、中小・ベンチャー企業による知財戦略の支援は一筋縄ではいかない。

<引用:2014/10/7 産経ニュース「知財担保に中小企業へ融資 特許庁が普及後押し」> 

今回の知的財産融資支援の仕組みを言葉に置き換えると、以下のようになります。

特許などの独自技術(価値ある知的財産)があっても資金調達できない(課題)。 ⇒ だから知的財産の専門家を送り込み、その会社がもっている知的財産の価値を評価した報告書をつくってあげる(解決策)。 ⇒ そして金融機関は、その報告書を参考にして融資するかどうかを判断する(効果)。

ところで、中小企業の課題は資金調達の手立てがないことなのでしょうか?もしこれが課題だとしても、知的財産融資の支援が解決策になるとは考えにくいです。なぜならこれでは、魚(資金調達ネタ)をあげているだけで、魚の釣り方(資金調達の手立て)を教えてはいないからです(魚どころか、魚を釣るエサに過ぎないかも。。。)。

また知的財産の価値を正確に評価するには、その知的財産をほしがる相手ありきです。砂漠の真ん中で死にそうな人にとって、水は価値が高いけどダイヤモンドは価値が低い、という考え方と同じです。また水じゃなくてビールのほうがいいとか、相手によって希望は異なります。そのため評価した価値の信ぴょう性のみならず、融資に対するリターンはナゾです。

だから中小企業の課題が資金調達の手立てがないことだとしても、知的財産の価値評価による融資の支援は応急措置に過ぎず、解決策にはならないのではないでしょうか。もっというと、中小企業の課題は、そもそも知的財産活動の欠如にあるのではないかとぼくは考えています。知的財産活動をしていないから、独自技術の価値を外部に発信できない、だから資金調達のネタがない、というロジックです。

知的財産活動の教育支援が課題を解決する突破口

ここで知的財産活動とは、特許をとるとらないばかりでなく、自社の技術をどう財産化すべきか?特許がベストなのか?デザインの意匠登録や商品名の商標登録は不要か?ノウハウをどうクローズするか?収益になりそうなウリ(差別化ポイント)を保護できているか?営業的に知財をどう活かすか?業界内のポジショニングと知財戦略のバランスは一致しているか?事業の業績に対して知財の維持管理費は負担になっていないか?など、事業戦略をフォローする知的財産の考え方や行動を示します。

そして中小企業がこれらの知的財産活動を行えれば、独自技術の価値を客観的に高められ、自社でも資金調達できるばかりか、事業の業績アップにもつながると考えられます。つまり中小企業の課題は知的財産活動の欠如で、それを解決するのは知的財産活動のノウハウを提供する教育支援となります。だから価値評価のために専門家を送り込むんじゃなくて、知的財産活動の教育のために専門家を会社に送り込むべきではないでしょうか。

では知的財産活動の教育に適した専門家とはどういう人材かというと、会社の事業戦略に対する知財戦略立案や経営企画にたずさわった実績がある人や、それらの教育を別途受けたことがある人、外部から会社の事業戦略に知財の専門家として参画したことがある人などが考えられます。また弁理士なら、代理人としての知見と企業内での組織の一員としての経験を兼ねそろえているのが理想でしょう。

≪まとめ≫

知財担保の仕組みは積極的に応援したいです。ただ継続的に企業の事業活動を支える試作としては、知財教育の仕組みも必要ではないでしょうか。また知財教育に対する意識もまちまちで、企業内でも対策している部門としていない部門があります。そのため経営層から現場の担当者までそれぞれに対して知財教育が必要でしょう。

<関連記事> 知的財産権の専門家の実態とオープンソース時代での働き方 

2014年10月7日

著者 ゆうすけ 

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