超高級オーディオスピーカーを開発して下請けから脱却した広島県の町工場の挑戦
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ビジネスモデル
下請け企業にとって脱下請けは重要な課題です。しかし技術力が伴っていない会社にとってオリジナル品の開発は相当ハードルが高いでしょう。しかしそうも言ってられず、どの会社も厳しい状況に変わりありません。
そんな崖っぷちの状態から手持ちの技術でピンチを打開し、完成品メーカーとして成長したオオアサ電子がカンブリア宮殿で紹介されていました。
photo credit: Tekke via photopin cc
オオアサ電子は「エグレッタ(Egretta)」というブランドのスピーカーで下請け企業からの脱却に成功しました。「エグレッタ」は“シラサギ”という意味で、命名時にちょうどシラサギを見かけたほど縁起のよいブランド名です。
「エグレッタ」はメイドインジャパンへのこだわりで部品もすべて日本製。そのヒットの秘密は、無指向性の音質です。円筒の下方から発した音を天面にぶつけ、上部の隙間を介して水平に音が広がる構造が特長です。これが無指向性スピーカーのカラクリです。
もともとは自動車部品のインパネ部品の下請け企業だったが、リーマンショックの影響で大口の取引先との契約が打ち切りになってしまいました。8割の仕事がなくなるということで、倒産の危機に追いやられました。
とにかく何かしなければならない状況で取り組んだことは、従業員との話し合いでした。そんな背水の陣で思いついたのが、下請けからの脱却でした。つまり自社製品開発への挑戦です。
オオアサ電子の長田社長いわく、大手取引先との関係が崩れることはないと信じ切っていたところでの打ち切りで、しかもその前からコストカットの相談が引っ切り無しで、モノづくりや生産効率の追求といった会話は全くなかったといいます。
このピンチを打開したのが社員のやる気でした。そして部品メーカーとしては勝ち目がないと思い、完成品メーカーへの成長を挑んだ結果、2年間の歳月を経て「エグレッタ」を開発しました。
現在は厚さは0.01mmのフィルムスピーカーの開発にも取り組んでいます。コーンが上下に振動する通常型とは異なり、蛇腹方向に振動させるものです。これによりハイレゾ(High Resolution)の音が出せる効果もあり、このスピーカーが実現すれば眠気防止などにも役立つそうです。
下請けを脱してからは大手企業とフラットな関係性を築けてきたそうです。そこには技術力が大切だが、大手のようなパワーはないため、他の中小企業とコラボして取り組むべきと長田社長は語っていました。
≪まとめ≫
下請け企業を脱却するのは相当な覚悟がいるでしょう。そのためとにかくやらないと後がない状況になってはじめて会社が一致団結するのかもしれません。もちろんそうなる前から危機を予測するか成長を見込んで自社の技術を整理し、自社製品の開発に取り組めるようにしておくべきでしょう。
2014年2月20日
著者 ゆうすけ
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