【速報】音の商標登録の傾向と対策(2015年10月27日公表の審査結果より)
本日(2015/10/27)、特許庁より、今年の4月1日から出願受付を開始した音の商標登録について、初めての審査結果が公表されました。
音の商標登録の出願件数は、4月1日時点で151件、10月23日時点で321件です。このうち、最初の151件のうち、21件が登録になりました。
音の商標は、会社や商品のイメージをユーザーの記憶に定着させる有効な手段。思わず口ずさみたくなるフレーズってありますよね。宣伝広告効果は高いはずです。
そんな新たな知的財産戦略の一環になりそうな音の商標登録について、公表された審査結果に基づき、3つの傾向と対策を整理しました。
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1.3音3文字1秒が最短
審査基準案では、例えば、商品に対して普通の音(スブレーに対してシューって音)や短すぎる単純な音のように、特徴がなく誰のか判断できない(識別力がない)音は、原則、登録できないと考えられています。
一方、今回登録された音商標で最短は、「ビオレ♪」(3音3文字1秒」)です。(以下、公報の引用)。
ここで、「ビオレ」は文字の商標として識別力があるため、音の商標としても識別力があると判断され、登録が認められたと考えられます。
だから、そもそも識別力がない3文字3音の言葉について1秒の音の商標を登録するのは難しいかもしれません。例えば、3音の言葉「ミカン♪」に指定商品「みかん」という音の商標は、よっぽど音に特徴がないと難しいのではないかと想定できます。
その他、音数・文字数・時間が短い音の商標は以下です。いずれも文字の商標として識別力があるため、短い音の商標でも一発登録されたとも考えられます。
「ヒサミツ♪」 4音4文字1秒 ※久光製薬
「カラリオ♪」 4音4文字1秒 ※エプソン
「 あじのもと♪」 5音5文字1秒 ※味の素
「 ビフナイト♪」 5音5文字3秒 ※小林製薬
「 ブルーレット♪」5音6文字1秒 ※小林製薬
「 クレペリン♪」 5音5文字1秒 ※大幸薬品
2.音に抑揚がなくてもOK
音の商標だから、音楽(リズム)っぽくないとダメなんでしょ?って思いきや、そうでもないようです。音に抑揚がなくても登録されています。
たとえば、「おーいお茶」(4音6文字4秒)(以下、公報の引用)。あのまったりしたいい方は特徴的でも、音に抑揚(リズム感)はほとんどないですよね。
また、「バンダイナムコ」(7音7文字1秒)の音の商標では、「・・・男性の声で発声される構成となっており、全体で1秒間の長さである。」というように、性別(男性)で音を限定しています(これが女性だったら権利範囲から外れるのかどうかは定かではありません)。
ただし、審査基準案によれば、音に抑揚がない商標と音読みした文字商標とは同一と判断されるリスクがあるため、この場合は先に文字商標を登録したほうが無難と考えられます。先に他のだれかに文字の商標を登録されたら、音の商標と似てるため登録できないかもしれないからです。
3.音源をMP3で記録したCD-Rを提出
これは形式的なことに過ぎませんが、大切な手続です。いざ出願しようと思ったけど音源がない!な~んてことにならないようにご注意ください。
実際、上で添付した公報にも「【音声ファイル】添付ファイルを参照してください。」という記載があるとおり、ちゃんと音の商標をMP3で提出しているはずです。
ちなみに、特許庁は音源を以下の形式で提出するよう指示しています。コスト的には「CD-R」の方がお得ですよね。
<光ディスクの提出に関する注意事項> ※一部抜粋
①光ディスクの媒体は、「CD-R」又は「DVD-R」。
②光ディスクに記録されるファイルは、MP3。
③光ディスクに記録されるファイルのサイズは5メガバイト以下。
④1つの光ディスクには、1出願分の1つのファイルのみ記録。
<引用:新しいタイプの商標の出願方法>
≪まとめ≫
まずはじめに、ほとんど誰もが知っている有名な音の商標が登録された印象を受けました。特許庁も音の商標の審査運用を検討しながら登録を進めているのかもしれません。今後、登録が認められない音の商標(拒絶査定)と登録が認められた音の商標とを比べて傾向と対策をより深く検討する必要があるでしょう。
<参考:新しいタイプの商標について初めての審査結果を公表します>
2015年10月28日
著者 ゆうすけ
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