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ハッシュタグの商標戦略の考察

公開日: : 商標, 商標トレンド, 商標戦略

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先日、「ハッシュタグも知的財産–商標登録する海外企業」という興味深い記事が公開されていました。

たしかにハッシュタグの活用は、宣伝広告やブランディングに役立ちそうですね。今ではツイッターだけじゃなくインスタグラムにも使われているからなおさらでしょう。

ハッシュタグのメリットを簡単にいえば、タグにひもづいた情報(ツイートや画像)をSNSが自動的にキュレーションしてくれること。

つまり、各SNSの機能を活かし、ハッシュタグにひもづく大量の情報をユーザーに対して表示できるため、かなりお徳!という発想です。

photo credit: La paz efímera via photopin (license)

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ハッシュタグ商標も普通の商標と同じ

ハッシュタグ商標は、#とネーミング又はキャッチフレーズの組み合わせです。なので、ネーミング又はキャッチフレーズに特徴がないと、基本的に日本で商標登録はできない(「#+指定商品の普通名称」は登録NG)でしょう。

では、ネーミング又はキャッチフレーズとして商標登録しているにも関わらず、ハッシュタグ商標として登録する必要があるかといえば、その必要性はほとんどないでしょう。普通の商標(ネーミング又はキャッチフレーズ)とハッシュタグ商標(#+ネーミング又はキャッチフレーズ)は類似と考えられるからです。

しかし、ネーミング又はキャッチフレーズが会社のロゴ商標の一部だったり、特殊な字体の商標として登録していたりする場合、ハッシュタグ商標とは非類似となる可能性があるため、別途ハッシュタグ商標を登録する価値があるでしょう。

ペプシコはソフトドリンクを指定

また、商標登録は商標(ネーミングやロゴ)と商品又は役務(サービス)がセットなため、指定する商品又は役務の選定はとても重要です。

ハッシュタグ商標も同様です。SNSのハッシュタグとしての使用がメインだとしても、商標は収益源となる商品又は役務を指定して使用しなければ、登録する意味がありません。

その点、米国で登録されそうなペプシコのハッシュタグ商標「#SAYITWITHPEPSI」の指定商品はソフトドリンクです(下記画像赤枠内、米国商標検索システムの画面引用)。

ちなみに、ペプシコは「#SAYITWITHPEPSI」のブランドをyoutubeでプロモーションしています。ドリンクの商品名として使用しているようにも見えますね。

日本では使用の意思があれば登録できる

なんかハッシュタグ商標って価値ありそうだけど、まだプロモーションにSNSも活用しきれてないから、ハッシュタグ使わないかもしれないんだよな~っていうお悩みも聞こえきそうです。

たしかに、米国等では登録する商標を実際に使用していなければ、登録は認められません。コカコーラのハッシュタグ商標「#COKECANPICS」は2016年1月に放棄されているようですが、商標の使用を証明できなかった可能性も考えられます(下記画像赤枠内、米国商標検索システムの画面引用)。

一方、日本では登録する商標を実際に使用していないとしても、その意思があれば足ります。具体的には、使用する意思の証明と事業計画書(ひな型あり)を提出すれば登録手続上はOKです(参考:「商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について」by 特許庁)

例えば、SNSでハッシュタグを試しに使いながらユーザーの反応を見つつ、拡散しはじめたらハッシュタグ商標を出願し、特許庁に使用の意思の確認を求められたら、その証明と事業計画書を提出して登録しておき、実際には商品開発などを経てハッシュタグ商標を使用しても、問題ありません。

悪意の商標出願から守る

ではハッシュタグ商標が独占権としてどれくらい効果があるのか?費用対効果はどの程度か?と聞かれたら、それはハッシュタグ商標に対する会社の方針次第なので、なんとも言えません。

ただ、SNSの拡散力を利用すればするほど、悪意のある第三者にハッシュタグ商標の存在や価値が知られるため、悪意のある行為のリスクが高まります。

特に、最近話題の「悪意の商標出願」への対策は考えたほうが無難でしょう。先取りされた商標を取り返したり無効にしたりする労力と早めに商標登録しておく労力を考えれば、後者のほうが圧倒的に楽です。

≪まとめ≫

諸外国の状況を考えると、日本でもハッシュタグ商標は今後の商標戦略のトレンドになるかもしれません。ただ、ハッシュタグ商標の構成(#+ネーミング又はキャッチフレーズ)や指定する商品(役務)は要検討です。また、出願のタイミングは、実際に使用していなくてもその意思があればいいので、慌てる必要はありません。しかし、SNSの拡散力が裏目って悪意の商標出願されないように注意しましょう。

2016年4月7日

著者 ゆうすけ 

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