*

特許でお金を借りられるのか?知的財産の価値評価による融資の理想と現実

公開日: : 特許, 特許トレンド

Pocket

知的財産(以下、「知財」)の活用は国家戦略にもなっています。特許で銀行からお金を借りることも、知財の活用の一つです。ところが、特許があればお金を借りられると考えている方もまだ少なくないようです。

photo credit: Make more money via photopin (license)

スポンサードリンク

知財権の価値が融資の決め手にはなっていない

金融庁は銀行に対して「事業性評価」という言葉を使い、中小企業が手掛ける事業の将来性を見極める「目利き力」で融資するよう迫っている。そんなことは言われるまでもなく、銀行として当然やるべきことだが、貸し倒れリスクを回避するために担保や保証に依存し続ける中で、銀行の目利き力はさび付いてしまった。

<引用:2016/1/19 「中小企業の資金繰り救世主にパナソニック子会社が名乗り」by ダイヤモンド>

知財(特に、特許)の価値を評価して融資を検討している金融機関の方に話を聞いたことがありますが、今だ、あくまでも特許の価値は事業性評価の一部に過ぎないそうです。

つまり、表向きには、特許に価値がある(≒事業性が高い)から融資した、というように見えますが、実際には、事業性評価のうち、特許の価値の評価が占める割合は小さく、その他の評価(財務、人材、設備、商品質、業績等)も考慮して総合的に判断しているというのです。

そのため、特許の価値を評価したという融資事例においても、融資して問題がない業績(回収の見込みが十分にある会社)だったことが一番の決め手となったとか。担保融資ならなおさらです。

特許が業績の向上に貢献している可能性はもちろんあるでしょう。しかし、貢献の度合い(≒特許の価値)の算定は、仮説(確からしい値)に過ぎません。そのため、特許の価値の評価が高くても、これを理由に融資したり融資額を増やしたりすることにはならないというわけです。

金融機関にとって、貸したお金がちゃんと帰ってこない融資は無駄です。そして、特許の価値そのものは、回収の見込みの保証にはなりません。だから本音は、特許の価値を算定した人に最終的な責任(例えば、特許の売り先や売却の保証)を取ってもらいたいのかもしれません。

そういう意味で、パナソニックIPマネジメントが責任をとるのかとらないのかはわかりませんが、今後、知財の価値評価が融資決定に占める割合を多くするには、価値評価の請負業者が信憑性のある仮説(より確からしい値)を提示するのみならず、金融機関も腹をくくって融資先と共に歩む心意気が必要ではないでしょうか。

≪まとめ≫

知財の活用といえば、ライセンス契約や譲渡による収入や金融機関からの融資など直接的な金銭的利益が理想論としてフォーカスされがちで、現実にはそう甘いものではありません。中小企業が知財で直接的な金銭的利益を得るには、まずはその知財を使って事業性を高めるほうが大切です。なぜなら、そもそも事業が成功していなければ、知財に価値がつきようもないからです。さらに、間接的な金銭的利益(例えば、営業効果、ライバルけん制、技術開発力向上等)にも現実論としてフォーカスすべきでしょう。

2016年1月20日

著者 ゆうすけ

Pocket



関連記事

14561581102_472fb7425c (1)

コンサル重視に転換する製造業に期待すること

先日(2016/5/9)、「日立、営業2万人増員 コンサル重視へ転換」という記事が日経新聞に

記事を読む

26443844932_c18ddab420

地域の知財活動に役立つサイトまとめ

日本では、特許庁が知的財産(以下、「知財」)の取りまとめをしていますが、特許庁は経済産業省の

記事を読む

inf160417

熊本地震で影響を受けた手続の救済措置

©特許庁※画像にリンクあり[/caption] 2016年4月14日から発生している熊本地方

記事を読む

4201580931_07bf5403d6

プロダクトデザインを意匠と特許で守る訳

プロダクトデザインの保護といえば意匠、というのは皆さんご存知かと思いますが、特許でも保護でき

記事を読む

25236620725_4df53fb958

ジェネリック家電のコピーを防ぐ特許戦略

photo credit: blood test via photopin (license)[/

記事を読む

20101606281_259b4e6f8c
社外弁理士に存在価値はあるのか?

先日(2016/5/16)の日経新聞に、「企業の枠越え 法実務

14561581102_472fb7425c (1)
コンサル重視に転換する製造業に期待すること

先日(2016/5/9)、「日立、営業2万人増員 コンサル重視

26443844932_c18ddab420
地域の知財活動に役立つサイトまとめ

日本では、特許庁が知的財産(以下、「知財」)の取りまとめをして

inf160417
熊本地震で影響を受けた手続の救済措置

©特許庁※画像にリンクあり[/caption] 2016年4月

4201580931_07bf5403d6
プロダクトデザインを意匠と特許で守る訳

プロダクトデザインの保護といえば意匠、というのは皆さんご存知か

→もっと見る



  • 弁理士/監査役/ブロガー。中堅企業、中小・ベンチャー企業、スタートアップに適した知的財産活動を提案。 「地域発 ヒット商品のデザイン」でネーミングと商標登録のコラムを掲載。
PAGE TOP ↑