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実はかなり戦略的な特許活動をしていた「おじいちゃんのノート」

公開日: : 特許, 特許事例研究, 特許戦略

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2016年早々、面白い特許がらみのニュースがありました。「おじいちゃんのノート」という方眼ノートがバカ売れしているというのです(ニュース記事はこちら)。

その切っ掛けは、方眼ノートを製造販売している会社に勤める男性のお孫さんがツイッターで商品紹介したこと。特許を取ったけど売れなかった中小企業のオリジナル商品がネットで話題になりヒット。

このストーリーは中小企業やスタートアップが目指すべき特許活動のモデルケースになるのではないかと思います。

そこで、「おじいちゃんのノート」の特許活動と販売活動の関係、特許の効果と特許がなかった場合のリスクをまとめました。ちなみに、特許の内容については、栗原先生の分析がわかりやすいです。

photo credit: Week #36 via photopin (license)

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実はかなり戦略的な特許活動

特許をとったからといって商品が売れるわけではありません。しかし、だからといって特許を出すのは意味がない特許を出してそれっきり(放置プレー)、というのはもったいない考え方です。

商品によっても特許の取り方はいろいろあります。ライフサイクルが短い商品(ノート等の消耗品)なら、早く特許をとってライバル会社に真似させない(真似されても文句を言える)状況づくりが効果的です。

その点、「おじいちゃんのノート」はかなり戦略的な特許活動がなされていました(特許出願の経過情報より推測)。商品価値を見極め、特許を活用できる自信もうかがえます(以下、表参照)。

本件のニュース記事の情報では、2014年10月に発売開始となっています。その後、同年の11月27日に特許出願をしています。

原則、商品販売後に特許はとれません。発明(アイデア)の新規性がなくなるからです。しかし、発明の詳細(構造や効果)がわからなければ、発明の新規性がなくなったことにはならず、審査をクリアし、特許が成立することもあります。

ひょっとしたら東京都のトライアル発注認定商品化の過程で、特許取った方がいいんじゃない?なんて言われたのかもしれませんね。

特許出願後間もない12月12日には、早期審査請求をしています。これは、早く特許にしたいから早く審査結果をちょーだい!というお願いをするものなので、ここからも特許への意欲が感じられます。

早期審査請求のおかげで、通常1~2年かかる審査結果を、約2ヶ月(2015年2月ごろ)で受け取っています。この辺の段取りも予定通りだったはずです。

そして、2015年4月23日に晴れて特許が成立しました。特許出願後、約5ヶ月のスピード特許です。ちなみに、のんびり進めれば、特許成立まで3~4年は余裕でかかります。

売れる前に特許を取っておいて一安心

特許を取った後の数ヶ月は商品が売れず、数千冊の在庫があったようです。これもよくある話で、ビジネスと特許は違うことを物語っています。

ところが、お孫さんによるツイッターでの商品紹介で一気に話題性がアップしました。ここで、もし特許をとっていない場合、想定できるリスクがこちらです(以下、図参照)。

ノート業界には大手から中小まで、多数の企業が参入しています。ノート業界全体を見れば、レッドオーシャン化しているかもしれません。

アイデアや技術をお互いに研究しあっており、合法的にパクれる部分は当然パクり合うため、特許がなければおじいちゃんのノートも悲しい結末が待っていたかもしれません。

しかし、すでに特許を取っていたため、おじいちゃんのノートは”特許の壁”で守られ、ライバル会社もそうやすやすとパクれなくなっているはずです(以下、図参照)。

もちろん、特許の内容にもよるため、全てのパクリ品から守れるわけではありませんが、少なくとも商品が売れ続けている間の時間稼ぎはできるはずです。

理想的には、改良したノートのアイデアについても特許出願しておけば、さらに特許の壁は厚くなるため、ライバル会社はさらに手を出せなくなるでしょう。

≪まとめ≫

商品がヒットするタイミングはわからないかもしれませんが、特許をとるタイミングはだいたい図れます。どのタイミングで特許活動のアクションを起こし、販売活動のアクションを起こすか?これは特許戦略上とても重要な考え方であり、これについては今回の事例がとても参考になると思います。

2016年1月7日

著者 ゆうすけ

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  • 弁理士/監査役/ブロガー。中堅企業、中小・ベンチャー企業、スタートアップに適した知的財産活動を提案。 「地域発 ヒット商品のデザイン」でネーミングと商標登録のコラムを掲載。
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