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『黒七味』vsロッテリアに学ぶ商標登録の本当のメリットとパクリ疑惑への対応策

公開日: : 商標, 商標トレンド, 商標事例研究

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ある言葉が商標登録されているのを知らなかったせいで、売れてる商品の販売を停止しなければならない。これが商標登録の破壊力です。

特に、普通っぽい言葉(登録できなさそうな商標)でも、審査官や審判官によっては商標登録が認められます。だからあきらめずに商標登録にチャレンジ(出願)する価値があります。

そんな商標登録の恩恵を受けた『黒七味』の原了郭と、ご当地食材を使ったフライドポテト「ふるポテ」の販売を中止したロッテリアから、商標登録の本当のメリットとパクリ疑惑への対応策が学べます。

photo credit: Pepper, Salt. via photopin (license)

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商標登録で商品の品質を保護できる

商標登録は何のためにするのか?意外とそのことが知られていません。確かに、他のだれかに商標がパクられないように登録するんですが、商標がパクられるデメリットって考えたことありますか?

原了郭の担当者は「ポテトを試食したが、原材料も違い、別物だった。黒七味の味が誤解される形で全国に広まってほしくなかった」と話している。

<引用:2015/10/28 「ロッテリアが商標無断使用「ご当地ふるポテ」の「京都黒七味風味」」by スポーツ報知>

今回の『黒七味』の場合、ロッテリアが原了郭に許可をとって使っていたかどうかなんて、多くの人にとっては知りようのないことです。

だから、ロッテリアの「ふるポテ」を食べて、『黒七味』ってこんな味なんだ~って勘違いされちゃうリスクがあるわけです。特に、原了郭の『黒七味』を知らない人に。

原了郭の『黒七味』のファンにとっても、もし味が違ってたらどうでしょうか。味落ちたな~とか、ブランドの安売りしているな~とか思われるかもしれません。

今回は早期発見のおかげで、『黒七味』が誤解されたまま全国に広まらずに済みましたが、もし原了郭が「ふるポテ」に気づかなかったら、『黒七味』の商品の品質を疑われてしまったリスクがあります。

つまり、商標登録があることで、商標をパクった粗悪品が世の中に広まらないようにでき、言い換えれば、商品の品質を保護できるわけです。 

素早い対応がパクリ疑惑の炎上を防ぐ

というように、原了郭は自社ブランド名が勝手に使われていることを知り、ロッテリアに対して『黒七味』が原了郭の登録商標であることを手紙で知らせました。

ちなみに、内容証明郵便で手紙を送った点から推測すると、原了郭は臨戦態勢でロッテリアのパクリ疑惑に立ち向かったと考えられます。内容証明郵便は手紙の内容や送った日を証明できる法的効果があるからです。

ロッテリアとしても、内容証明郵便の重みを理解しているはずなので、これを受け取って無視することはできなかったのでしょう。そして、手紙を受け取った10月5日から10日後には、以下の謝罪文を発表しました。

『黒七味』の名称は株式会社原了郭様の登録商標であり、この登録商標に関する商標権者である株式会社原了郭様及び関係者の方々に多大なるご迷惑をおかけしましたことをここにお詫び申し上げます。

<引用:2015/10/15 「ご当地ふるポテ(京都黒七味風味)販売休止についてのお知らせ」>

このわずか10日の間で、ロッテリアでは少なくとも以下のことが行われたと考えられます。商品販売開始日(2015/9/17)からのスピード撤収劇です。

『黒七味』の商標登録の内容確認

本当に原了郭が『黒七味』の持ち主(商標権者)なのか?、『黒七味』の商標登録がいつまで続くのか(実は権利が失効してたりしてないか?)、指定商品は何なのか?(ポテトなのか?コショウなのか?)など、商標登録の内容を確認しないでパクッたパクッてないの議論はできません

反論するメリット・デメリットの検討

ロッテリアとしては、『黒七味』は昔から普通に使われてきた名称だから商標登録として無効だ!など理由をつけて反論することもできたはずです。ですが、原了郭は老舗企業であること、「ふるポテ」は限定商品であること、争えば時間とコストがかかることなどを踏まえて、反論のメリットよりデメリットのほうが大きいと判断したと考えられます。

商品販売中止に伴う調整

商品販売を中止するということは、製品の生産や取引の中止も必要です(今回なら冷凍ポテトとかパッケージとか)。また、宣伝広告の取り外しや削除も行われたのではないでしょうか。もし売上の一部を占める商品だったら、販売中止に伴う業績の下方修正も必要なはずです。当然、これらを実行する人件費はかかるわけで、目に見えない損失もかなりあるでしょう。

謝罪文リリースの検討

そして、反論しない(要求を認める)と決めたからには、「ふるポテ」の販売中止販売中止の理由、さらに原了郭や関係者への謝罪をどのタイミングでするか?内容はどうするか?など肝心です。特に、最近はオリンピックロゴのパクリ疑惑騒動があったばかりなので、下手したら炎上のリスクもあったでしょう。

結果的に、ロッテリアの素早い対応力が、パクリ疑惑の炎上を回避したと共に、企業イメージの低下を防いだと考えられます。

≪まとめ≫

今回のケースは、商標登録の具体的なメリットと商標パクリ疑惑へのスピーディーな対応策の参考になると思います。

特に、中小企業にとっては自社ブランドを築くために商標登録がいかに大切か、大手企業にとってはネーミングやロゴやキャラクターなど一般ユーザーに誤解されやすいパクリ疑惑の対応がいかに大切か、という教訓になったのではないでしょうか。

産業の発達が目的の知的財産権で互いの足を引っ張り合う使い方は避けたいものです。

2015年10月30日

著者 ゆうすけ

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  • 弁理士/監査役/ブロガー。中堅企業、中小・ベンチャー企業、スタートアップに適した知的財産活動を提案。 「地域発 ヒット商品のデザイン」でネーミングと商標登録のコラムを掲載。
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